昨日NHKで「あしたのジョー」の時代を捉えた番組を見た。団塊の世代が青春のまっただ中にあった70年前後。68年から73年まで少年マガジンに連載された「あしたのジョー」は同世代のものにとって特別なものとなった。主人公・矢吹丈が少年院で永遠のライバルとなる力石徹と出会う。ボクサーの道を歩みだしたジョーと2階級体重を落としてまで彼の挑戦を受けようとする力石の姿。壮絶な試合はジョーの敗北で決着がつくのだが、終わって握手を求めたジョーの手をかすめるように力石の手が宙を切り倒れ込む。このカットは今も目に浮かぶ。力石徹の葬式をやろうと寺山修司が声を上げ天井桟敷のメンバーらで行われた。大学の劇団「いかづち」の部室では大変な話題だったのを覚えている。目的を失ったジョーは自分が壊れることを望むかのようにボクシングに憑かれたようになる。最後の試合では倒されても倒されても立ち上がり、勝者を逆に恐れさせる。身体も心もぼろぼろになり、抜け殻のような姿でコーナーのいすに腰掛けるジョー。このラストカットはいろいろな含みを持たせて話題を呼んだ。橋の下の丹下ジムは高度経済成長においていかれた場所。団塊世代にはまだまだ共感出来るシチュエーションだった。