早く起きることが出来なかった。気がつくと外は明るかった。あわてて6時半にカブを走らせた。飛鳥寺の近くですりぬかを焼いていた。
すりぬかとは籾殻のこと。焼いて野菜の種まきや、苗ものを植えたときなどに使われる。燻る煙は秋の風物詩だ。10月に稲を刈り取り、ハザ掛けにして11月に脱穀。籾を筵に広げて干す。どこの家でも庭にそういう場所があった。干した籾は最後に籾すりをする。そうしてやっとお米になる。玄米の出来上がりだ。
この籾すりは大仕事だった。家族全員が手伝った。家に機械はなく、隣の集落の人が持っていて何軒もの家を回っていた。1日仕事だった。そのときに籾殻ができる。この辺では臼引きと言う。これで一年の田んぼは終わった。米袋が持てるようになると子供でも一人前に手伝った。父母が主となり、一大イベントの仕上げが臼引きだった。新米は甘みがあって漬け物だけで十分おいしかった。あの味は父母の動く様と共に今も覚えている。