明日香から吉野へ越える芋峠。その峠につづく最後の集落が栢森だ。谷の窪地にある村の中では3つの川が合流している。右は芋峠へ、真ん中は小峠へ、左は竜在峠の峰へと続いている。この集落に加夜奈留美命神社が鎮座まします。
飛鳥川の源流部を為すこの辺りでは水の結晶が下流部と大きく違うらしい。美学者の寺尾勇氏がそんなことを書いていた。水の結晶って違いがあるのか?、とそのときに初めて知った。それだけ水がきれいだということなのだろう。
皇極天皇が雨乞いをした地ではないかともいわれる神社周辺は、なるほどそれらしき雰囲気を漂わせる。吉野へ越える多くの旅人が憩ったであろう集落の佇まいは、今もその様を彷彿とさせる。集落のはずれにある「ごろ滝」は、炎天の夏空を避け、身にしみるような冷気を落としていた。