舞台の練習を終え空を見ると雲間にカシオペア座が見えた。月明かりが風舞台の屋根を照らし、これから何かが始まろうとする気配がある。皆は帰ってしまった。明かりの消えた舞台は静まりかえり登場人物を待っている。本来なら秋風が腕に冷たく感じるはずなのに蒸し暑い空気が澱んでいた。ほてった体をもてあましながらしばらく星空を眺めていた。
やがて一人二人と月光を背に受け雲間から降り立つ役者たち。舞台の板がその足音をトンッと響かせる。音がリズムを作ってこだまし、激しい息づかいまで聞こえてきそうだ。そうだ、その調子、止まることなく演じ切れ!、と檄を飛ばすと辺りの虫の音と同化し消えていった。下弦の月がまぶしい日曜の夜。