冷たい雨
 昨日は冷たい雨だった。朝の気温2度。6時に起きると外はまだ暗かった。文化サロンの撮影の日で、残念ながら先日のような雪にはならなかったが、石舞台から傘を差しながら酒船石、飛鳥寺、甘樫丘と歩いて撮影してもらった。甘樫丘からは八釣や東山が煙って少し歓迎してくれた。南には本堂の屋根が改修になった橘寺の伽藍が見える。直ぐ後ろは祝戸公園の展望所のある丘、さらに朝風附近の山が重なりその向こうに高取城址の峰が走っている。
 聖徳太子が生まれたという橘寺は父が修行した寺、我が家にとってかかわりのあるお寺で、もの心ついた頃から母に連れられよく遊びに行った。それゆえお寺というと橘寺が浮かんでくる。昔は小学校の校区が違ったので、住職の子とは歳が離れていたせいか会ってはいなかった。それが十年前に役場の職員だった彼と出会い、時空の旗揚げ公演に参加してもらった。棚田オーナー制に尽力し、川辺を渡る風のように生きようとした彼は2年前、石舞台近くの民家を自ら改装し「夢灯り」という店舗を開いた。
 昨年11月に身体の調子が悪いと聞いて訪ねると、抗がん剤の副作用でしんどいといいながら、アクセサリー制作の作業をしていた。数年前のガンが再発していた。長男でありながら寺を継がずに生きてきたが、もうあまり時間がないので整理をしておかないと、と自分の葬儀の場所のことなど話した。加川良が好きで、ギターを手に歌う彼「歌を残してくれよ」というと、「せやな…」と静かに微笑んだ。なんとか年を越した彼は22日亡くなった。昨夜の通夜に彼の歌が流れていた。6歳年下の彼は少年のように明日香の原を駆けぬけていった。
 冷たい霧雨が寺にかかっていた。仏頭山はただ黙してそこにある。彼の思いはもう多くの人に受け継がれているだろう。合掌。
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by asuka-ji | 2008-01-24 14:02 | 明日香 | Comments(9)
Commented by West Shrine at 2008-01-24 21:53 x
今に生きる飛鳥人の大切な友を失われてとてもお淋しいことと存じます。彼の人が生きたかった今日のこの一日々々を大切に彼の分までと頑張って上げて下さい。 asuka-jiさんのエッセイを拝読して、これまでよく橘寺の駐車場前山門付近で優しく言葉を交わして下さったご住職に一層の方親しみを感じてしまいました。
今日も素晴らしい明日香の景色を楽しませて戴いて有り難うございます。生駒山の西では風花が舞ったり陽が差したり時雨れたりでした。
Commented by K at 2008-01-25 06:48 x
どんなにがんばっても、ひゃくねんいじょういきるひとはすくないわけで、かなしいのは、すこしわかいこと、こころざし、あすかにいきてほしい。
Commented by anan at 2008-01-25 06:50 x
昨年の暮れに、親友から「癌が再発した」と、電話がありました。
電話口で二人で号泣しました。それから、思い出しては泣いて暮らしています。
昨日大きな病院で治療についての説明があり「完治はしませんが、いい薬があるので上手に付き合っていきましょう」っていわれたと連絡があり、告知がなかったことに安堵しているところです。
これから辛い治療が始まる友人に「がんばって」としかいえない私です。

ご冥福を心よりお祈りいたします。
Commented by 行仙 at 2008-01-25 15:45 x
久しぶりに書かせて頂きました。知り合いでもお若い方が亡くなられるのは心痛むもので、健康で長生きしたいのは誰の思いも同じでょうが、いつまでも保証は無い体、一日一日大事にしておきたいですね。
ご冥福をお祈りいたします。
Commented by asuka-ji at 2008-01-26 13:00
West Shrineさん、いつも精力的に飛び回っておられるご様子。私も見習わねばと思います。橘寺の住職は寺の復興に尽力された方でいつも母がその功績を話してくれました。
Commented by asuka-ji at 2008-01-26 13:02
Kさん、彼の志は受け継がれ明日香の地に根をはっていくでしょう。
Commented by asuka-ji at 2008-01-26 13:14
ananさん、生きていくということは辛く苦しいものなのですね。涙し、地団駄を踏んで、それでも前を向いていかなければならない。等しく与えられた喜びや悲しみ。短い人生の中で自分の役割が何であるのか探し続けるのでしょうね。がんばるしかないのですよ。
Commented by asuka-ji at 2008-01-26 13:17
行仙さん、一日一日大事にしなければといつも思うのですが、ついいいかげんに過ごしてしまう。怠けてしまう弱い自分が情けないです。
Commented by 茶々ママ at 2008-02-11 23:48 x
人の死は残されたものに生きる意味を問い返してきますね。人は必ず死ぬものですが、徐々に老化していく中で実感するものですから若くして突きつけられた死はしんどいものですよね。良く生きましたね、頑張りました。本当にお疲れ様でした。それが精一杯の言葉です。
そしてそれほどの人生を生きられるだろうか?と自分の生き様を考えさせられます。精一杯頑張らねば・・・自分の役割を探しながら~
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写真家・上山好庸
(社)日本写真家協会(JPS)
会員
昭和25年明日香村生まれ。
48年中京大学卒業。
奈良新聞社を経て写真家を志す。
61年フリーとなる。

※写真の無断転載はご遠慮下さい。
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