キトラ古墳の白虎像を見てきた。意外と小さくきれいだった。ケースの中に入ったはがされた壁は、漆喰がまだ白くアイボリー色で墨色の線書きに口の中や部分的に朱が入っている。一緒になった日本画の烏頭尾先生はかなり描ける人ですねと話された。よく見ると下絵のようなかたどりがあって、それをなぞるように描かれている。だがその線を逸脱して描かれたところもあり、絵師の筆による力やリズム、勢いのようなものが感じられる。素晴らしいと思った。反面、これでいいのかとも思う。土器や木簡と違い遺跡は現地にあってこそ意味のあるものだ。まして静かな眠りついた死者の墳墓だ。水を差された被葬者の霊は安住の地を探して彷徨っているかも知れない。はがされた以上は何らかのかたちで公開すべきだろうが。現地キトラ古墳のそばで、方法はしっかりと考えねばならないだろう。
明日から飛鳥資料館で一般公開される。
芋峠への道