腰をかがめて左から右へ稲の株を鎌で切り取っていく、6つの株を刈り取ると左手はいっぱいになる。その稲穂を置いてつづいて6株刈って先のとまとめると一束の稲になる。それを繰り返し田んぼの端まで刈っていく。振り返ると稲の束が綺麗に並んでいる。その束を母が藁で縛っていく。その早さがあまりにみごとで、まとめ方を教えてもらった。父はハザ掛けの準備をしている。田んぼに足を立て、その上に長いカコという木を渡して馬を作る。その馬に稲の束をハザ掛けにした。
子供の頃の光景が稲田を見ていると浮かんでくる。父母も家族は皆よく仕事をした。というよりそれが生活だった。刈った草や藁の匂い、どこからともなく野焼きの煙が漂う夕方。満ち足りていた日々だった気がする。